サド侯爵/ヴァルター・レニッヒ著、飯塚信雄訳

MARQUIS DE SADE by WALTER LENNIG

1972/伝記/理想社(Rowohlts monographien/1965/ドイツ)


古本屋で見つけたサドの伝記。恐らく1965年にドイツで刊行されたものの訳出。
古いものなので、勿論情報もそれ相当のものだが、スタイル的にはなかなかの良品。サドを取り巻く人々のキャラクターや、社会的背景などを明確にする文章に重点がおかれていて、解りやすく、ドラマ性さえ感じられる。また、画像資料も充実。澁澤氏の「サド侯爵の生涯」を読んだ後でも、少し違った角度から興味深く、サドの人生を追ってゆくことができる。
この本の最初に、サド伝を読むことの意義を説明した文章があるので、引用しよう。

"サド侯爵の場合にはその生涯を、個人的な運命のあとをたどってみることが、他のいかなる人物におけるよりも大切である。 (中略)彼の作品はサドの個人的な運命の中から生まれてきたものであり、この操作なくしては彼の作品を理解することが困難なのだから。

サドは自分のまとはずれな行為が本性の気まぐれであり、変えることのできないもの、そして、当然治療不可能なものだからという理由で自分が非難されることに反論した。この反論によってサドは今日も心ある人々を動かしている判決のジレンマという問題に、あまりにも早く触れている。確乎とした根拠もなく論証することもできない道徳というようなものに正義を基づかせてよいものかどうか、という問題である。

サドの悪への告白は単なる自己告白にすぎないのだが、また、同時に人生と自由と正義を求める意志でもある。"

(ザッピー浅野)


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